秋の食卓といえば、炊きたての新米。お店に並ぶお米を見比べて、「今年の新米のほうが、去年のお米より安いの?」と不思議に感じた方もいるのではないでしょうか。
2026年秋、一部の店頭では、令和8年産の新米が令和7年産の前年産米を下回る価格で販売される「価格の逆転現象」が起きています。背景にあるのは、お米そのものの新しさよりも、仕入れた時期の価格や、在庫、需給の変化です。
ただし、すべての新米が古米より安いわけではありません。産地や品種、栽培方法、販売条件によって価格は異なります。今回は、新米と古米の価格が逆転する理由から、毎日のご飯をおいしく楽しむための選び方まで、順を追ってご紹介します。
※本記事は2026年10月15日時点で確認できる公表資料・報道をもとにしています。価格や販売状況は変動します。
目次
新米と古米の価格逆転はどのような現象か

一般に、新米にはその年に収穫されたお米ならではの季節感があり、前年産米より高く販売される場面もあります。それに対し、今回注目されているのは、新しく出回るお米のほうが、すでに在庫として持っている前年産米より安くなるケースです。
テレビ愛知の2026年10月1日の報道では、名古屋市のスーパーで、銘柄によって新米5kgが約2,679円で販売されている事例が紹介されています。前年産米の在庫が残るなか、手頃な新米が先に売れる状況も報じられました。[1]
この価格は、特定の店舗・商品の販売事例です。全国の平均価格でも、同じ産地・品種・栽培条件の商品をそろえて比較した価格でもありません。それでも、収穫年が新しいから必ず高い、古いから必ず安い、という見方では説明できない状況が生まれていることがわかります。
参考:[1]テレビ愛知 新米続々入荷 値下がりで5キロ2679円 古米との価格逆転で売れ行きに異変 2026年10月1日
新米より古米が高くなる3つの理由

価格逆転の背景には、前年産米と新米を仕入れた時期の違いがあります。前年産米の高い仕入れ価格が残る一方、概算金の引き下げや在庫と需要の変化により、新米を安く販売しやすい条件が生まれています。主な理由を3つに分けて見ていきましょう。
前年産米には高かった仕入れ価格の影響が残る
前年産米の販売価格が下がりにくいのは、高値で仕入れた原価が残っているためです。翌年の市場環境が変わっても、すでに仕入れた在庫の原価が自動的に下がるわけではありません。
お米の販売価格には、生産者から集めるときの価格に加え、保管、精米、袋詰め、輸送などの費用も含まれます。こうした費用をまかなう必要があることも、販売価格をすぐに下げにくい理由です。
参考:[1]テレビ愛知 新米続々入荷 値下がりで5キロ2679円 古米との価格逆転で売れ行きに異変 2026年10月1日
新米の概算金が前年より下がった産地がある
新米の概算金が前年より下がった産地では、仕入れコストを抑えられる条件が生まれ、前年産米より安い価格で新米を販売しやすくなります。
概算金とは、JAなどが生産者に先に支払うお金のこと。最終的な精算額や、スーパーの販売価格そのものではありませんが、産地でお米を集める際の価格を知る手がかりになります。時事通信の2026年8月27日の報道では、新潟や北海道などで令和8年産米の概算金が前年より引き下げられ、前年産米より安い新米を販売する精米店の事例が紹介されています。[2]
ただし、概算金が下がった割合と、店頭価格が下がる割合は同じではありません。流通経費や契約条件もあるため、「産地の価格が4割下がれば、どのお店でも4割安くなる」とは限りません。
参考:[2]時事通信 JIJI.com掲載 新米の概算金、下落相次ぐ 前年産が大量在庫、販売見通せず―店頭価格の「新古逆転」も 2026年8月27日
在庫と需要の変化で新米の販売環境が変わった
前年産米の在庫が残るなかで十分な量の新米が供給される見通しになると、買い手の需要に対して供給に余裕が生まれ、新米の価格を下げる方向に働きやすくなります。
農林水産省の2026年9月4日の会見では、6月末の民間在庫量が243万トンだったことが示されました。また、令和8年産米の生産量を735万〜754万トンと見込むなど、供給が十分に確保されるという判断が説明されています。[3]
これは、令和8年産米の収穫量がすべて確定したという意味ではなく、その時点の見通しです。前年産米の在庫があるところへ新米が入ると、売り手は両方のお米を販売していく必要があります。供給の見通しが立ったことで、新米を安く売り出しやすい環境が生まれたといえます。
参考:[3]農林水産省 鈴木農林水産大臣記者会見概要 2026年9月4日
新米と古米の違いは収穫年と保管状態

新米と古米は、主に収穫年によって呼び分けられます。ただし、味わいや品質を考えるうえでは、収穫年だけでなく、保管方法や精米時期も大切です。まずは米袋の表示の見方と、古米のおいしさに関わるポイントを確認しましょう。
収穫年と精米時期は別の情報
2026年秋に前年の令和7年産米を指して「古米」と呼ぶ場合、それは収穫年についての表現です。「去年収穫したお米」と「去年精米して、そのまま置いていた白米」は、同じではありません。
玄米の状態で保管し、販売に合わせて精米されるお米もあります。米袋にある産年は、原料のお米が収穫された年。精米時期は、玄米を白米にした時期を表します。この2つを分けて見ることが、お米選びの第一歩です。[4]
参考:[4]農林水産省 玄米及び精米の年月旬表示の導入について
新米と表示できる期間にも決まりがある
容器包装への「新米」表示には条件があります。玄米は収穫した年の12月31日までに容器包装に入れられたもの、精米は同日までに精白され、容器包装に入れられたものが対象です。[5]
収穫してから単純に1年以内なら、どのお米にも「新米」と表示できるわけではありません。購入するときは、大きく書かれた新米の文字とあわせて、産年も確認してみてください。
古米だからおいしくないとは限らない
お米は保管中に変化しますが、その進み方は温度や保管方法に左右されます。農林水産省の解説でも、低温貯蔵によって品質の変化が抑えられることが示されています。[6]
年産だけで味を決めつけず、どのように保管され、いつ精米されたかにも目を向けたいところです。また、甘み、粘り、粒感などの好みは人それぞれ。新米か古米かに加えて、品種の特徴や、いつものおかずとの相性も選ぶ楽しみになります。
価格逆転のときに確認したいお米選びのポイント

価格を比べるときは、収穫年だけでなく、産地や品種、栽培方法などの条件をそろえることが大切です。さらに精米時期と保管方法を確認し、無理なく食べきれる量を選びましょう。購入時に確認したいことと、買ったお米をおいしく楽しむためのポイントをご紹介します。
同じ条件で価格を比べる
価格の違いを確かめたいときは、収穫年以外の条件もそろえて比べてみましょう。同じ5kgでも、産地、品種、単一原料米かブレンド米か、栽培方法などによって価格は異なります。通販なら、送料を含めた支払総額で比較するとわかりやすくなります。
新米が安く見えても、前年産米が有機栽培や特別栽培のお米であれば、価格差には収穫年以外の理由もあります。「新米と古米の違い」なのか、「もともと違う商品の価格差」なのかを分けて考えることが大切です。
精米時期と保管方法を確認する
米袋や商品ページでは、産年に加えて精米時期も確認しましょう。玄米で販売されている場合は、精米の有無や方法も選ぶポイントになります。
家庭では、清潔な密閉容器に入れ、涼しい場所で保存するのが基本です。冷蔵庫の野菜室を使う場合も密閉し、湿気やにおい移りを防ぎましょう。農林水産省は、精米後約1か月で食べきれる量の購入を勧めています。[7]
安く買えても、食べきるまでに時間がかかれば風味は変わっていきます。毎日の炊飯量に合うサイズを選ぶと、おいしく食べきりやすくなります。
参考:[7]農林水産省 米を取引する際に守るべき法律 米の保管方法
炊き方はいつもの水加減から調整する
「新米は水を少なく、古米は多く」と聞いたことがある方もいるでしょう。現在は保管技術が進み、お米の水分が管理されているため、年産だけで一律に水を増減する必要はないとされています。[8]
まずは炊飯器の目盛りや商品の案内に合わせて炊き、硬さを見て次回から少しずつ調整してみてください。新米という理由で水を大きく減らすより、お米と炊飯器に合う水加減を探すほうが、好みのご飯に近づけやすくなります。
お米の価格は今後どうなるか

前年産米の在庫が減る、新米の収穫量が明らかになる、仕入れ契約が切り替わる。こうした変化によって、店頭の価格差も変わっていきます。現在見られる価格逆転が、そのままずっと続くとは限りません。
また、全国の在庫量に余裕があっても、特定の産地や品種、栽培方法のお米まで同じように豊富とは限りません。「これから必ず値下がりする」「いま買うのが最安」と決めつけることは難しいのです。
私たちの家計にとって、手頃な価格でお米を買えることはうれしい変化です。一方、販売価格には、翌年もお米を育て、届けるための費用が関わっています。時事通信の報道でも、概算金の下落と生産者の経費負担への懸念が取り上げられています。[2]
価格を比べながら、育てた人や栽培の工夫にも目を向けてみる。毎日の一膳を選ぶことが、これからのお米づくりを考えるきっかけにもなります。
参考:[2]時事通信 JIJI.com掲載 新米の概算金、下落相次ぐ 前年産が大量在庫、販売見通せず―店頭価格の「新古逆転」も 2026年8月27日
新米と古米の価格に関するよくある質問(FAQ)

Q. 新米より古米が高いのはなぜですか?
Q. 安い新米は品質が悪いのでしょうか?
価格だけでは品質を判断できません。仕入れ条件や需給、販売企画なども価格に影響します。産地・品種・産年・栽培方法・精米時期を確認し、求める味や条件に合うかを見て選びましょう。
Q. 古米と備蓄米は同じものですか?
同じ意味ではありません。古米は収穫年が前の年のお米を指して使われる呼び方で、政府備蓄米は政府の備蓄制度で管理されるお米です。前年産米だからといって、政府備蓄米とは限りません。
Q. 新米と古米ならどちらを選べばよいですか?
季節の新米を楽しみたいなら新米を、気に入った品種や価格、保管・精米条件を重視するなら前年産米も含めて比較してみてください。収穫年だけでなく、ご家族の好みと食べきれる量を基準にすると選びやすくなります。
今年の食卓に合うお米を探してみませんか
今回の価格逆転は、お米の値段が「新しいか古いか」だけで決まらないことを教えてくれます。手頃な新米を見つけたら、これまで食べたことのない品種を試してみるのもよいですね。
ツナギでは、生産者や産地、品種、栽培方法などからお米を探すことができます。いつものご飯に求めるのは、もっちりした食感でしょうか。それとも、一粒一粒を感じられるすっきりした味わいでしょうか。価格とあわせて、お米それぞれの個性も楽しみながら、食卓に合う一袋を選んでみてください。











前年産米を高い価格で仕入れた影響が残る一方、新米の仕入れ価格が下がると、販売価格が逆転することがあります。ただし、異なる産地や品種を比較している場合は、収穫年以外の条件も価格差に関わります。