春になると、田んぼ一面を彩るピンク色のれんげ草。美しい春の風景として知られていますが、実は、次のお米を育てるための「土づくり」にも役立っていることをご存じでしょうか?
れんげ草を田んぼの緑肥として活用する「れんげ農法」は、植物の力を土へ還し、次の稲へつないでいく昔ながらの米づくりです。では、れんげ草はどのようにお米づくりに役立つのでしょうか?
今回は、「れんげ米とは?」という基本から、れんげ農法の仕組みや緑肥の役割について分かりやすくご紹介します。さらに、埼玉県さいたま市の浪江農園さんが大切に受け継ぐれんげ農法と、特別栽培米「あきたこまち『れんげ姫』」の魅力にも迫ります。
目次
れんげ米とは?

れんげ米とは、田んぼで育てたれんげ草を土にすき込み、「緑肥(りょくひ)」として土づくりに活かして育てたお米のことです。春になると、田んぼ一面をピンク色に染めるれんげ草。かつて日本の田園風景では、田植え前の田んぼにれんげの花が広がる光景が各地で見られました。美しい春の景色として親しまれてきたれんげですが、お米づくりでは、次の稲を育てるための土づくりにも大切な役割を果たします。
れんげ農法とは
れんげ農法とは、稲刈り後の田んぼでれんげ草を育て、春に土へすき込み、次のお米づくりに活用する昔ながらの栽培方法です。稲作と稲作の間にれんげを育てることで、田んぼの中で植物の力を次の米づくりへつないでいきます。
緑肥とは
緑肥とは、植物を収穫するのではなく、その植物自体を田畑へすき込み、土づくりや次の作物の生育に役立てる方法です。れんげはマメ科の植物で、古くから緑肥として利用されてきました。
れんげ草がお米づくりに役立つ理由
れんげは、「次のお米を育てるために、田んぼの中で育てる肥料」のような役割を持つ植物です。その鍵となるのが、れんげの根に共生する「根粒菌(こんりゅうきん)」です。
・根粒菌の働き(窒素固定):
空気中の窒素を、植物が利用できる形に変えます。
・有機物・養分の還元:
成長したれんげを土へすき込むことで、有機物や養分を田んぼへ戻します。こうしてれんげを緑肥として活用することで、土へ有機物を補い、化学肥料だけに頼りすぎない土づくりへとつなげることができます。
れんげ農法はどのように行われる?
れんげ農法では、お米を収穫した後から翌年の田植えまでの期間を活用して、れんげを育てます。大きな流れは次の3つです。
1.稲刈り後にれんげの種を播く
秋の稲刈りが終わった田んぼに、れんげの種を播きます。れんげは冬を越しながら、ゆっくりと成長していきます。
2.春にれんげの花が咲く
春を迎えると、れんげはピンク色の花を咲かせます。田んぼ一面に広がるれんげ畑は美しい田園風景ですが、お米づくりでは、このれんげそのものが次の土づくりにつながっていきます。
3.れんげを田んぼへすき込む
育ったれんげを田んぼの土へすき込みます。土の中でれんげが分解されることで、有機物や養分が土へ戻り、その後に植えられる稲の生育へとつながっていきます。ただし、れんげは量が多ければ良いというわけではありません。生育量やすき込む時期、その年の天候、田んぼの状態などを見ながら調整する必要があります。自然の力を活かす農法だからこそ、生産者の経験と細かな管理が欠かせません。
れんげ農法にはどんな特徴がある?
れんげ農法の特徴は、田んぼの中で植物の力を循環させながら、次の稲を育てるための土を整えていく点にあります。主な特徴を3つに分けて見てみましょう。
土づくりに役立つ
れんげをすき込むことで、田んぼへ有機物が供給され、次のお米を育てるための土づくりにつながります。毎年お米だけを作るのではなく、稲作と稲作の間にれんげを育てることで、田んぼの中で植物を循環させていくのが特徴です。
化学肥料の使用量を抑えることにつながる
れんげは、根粒菌の働きによって窒素を取り込むことができるマメ科植物です。そのため、れんげを緑肥として利用することで、化学肥料の使用量を抑えた栽培につなげることができます。
自然の循環を活かした米づくり
稲を収穫した田んぼでれんげを育て、そのれんげを再び土へ戻し、次のお米を育てる。れんげ農法には、田んぼの中で自然の循環を活用してきた、昔ながらの農家の知恵が受け継がれています。
れんげ米は「無農薬米」や「有機米」と同じ?
れんげ米と「無農薬米」や「有機米」は、同じ意味ではありません。れんげ農法は、れんげを緑肥として土づくりに活用する栽培方法であり、それだけで農薬を使っていないことや、有機栽培であることを示すものではありません。
お米を選ぶ際には、れんげ農法かどうかとは別に、それぞれの商品に記載されている栽培方法を確認することが大切です。今回ご紹介する浪江農園さんの「れんげ姫」は、特別栽培米として育てられています。
埼玉県さいたま市・浪江農園さんの「れんげ姫」

ツナギでご紹介しているれんげ米が、浪江農園さんの埼玉県さいたま市産「あきたこまち『れんげ姫』(特別栽培米)」です。
浪江農園さんの田んぼが広がるのは、埼玉県さいたま市の馬宮地区。住宅地のイメージもあるさいたま市ですが、少し離れると田園風景が広がり、昔から米づくりが続けられてきました。この地域で浪江農園さんが大切に受け継いでいるのが、昔ながらのれんげ農法です。
父から受け継いだ、れんげを活かした米づくり
浪江農園さんでは、稲刈り後の田んぼにれんげの種を播き、冬を越して育ったれんげを翌春に土へすき込みます。ただし、毎年同じように作業すればよいわけではありません。
れんげの育ち方は、その年の気温や雨量、田んぼの状態によって変わります。そのため、生育量を確認しながら種を播く量や土づくりを調整し、その後の稲の生育まで見据えて管理を行います。
浪江さんが大切にしているのは、「米づくりは毎年が1年生」という気持ち。長年米づくりを続けていても、天候も田んぼの状態も毎年異なります。自然を相手にするからこそ、その年の田んぼをよく観察し、一つひとつ判断しながらお米を育てています。
丈夫なお米を育てるための「苗づくり」
浪江農園さんのこだわりは、れんげによる土づくりだけではありません。お米づくりの始まりとなる「苗づくり」も大切にしています。
苗を育てる際には温度管理を細かく行い、根がしっかりと張った丈夫な苗に育てます。れんげによって整えた田んぼに健康な苗を植え、その後も田んぼや稲の状態を確認しながら丁寧に育てていく。一つひとつの栽培工程を積み重ねることが、浪江農園さんのお米づくりにつながっています。
浪江農園「れんげ姫」の味わい

浪江農園さんの「れんげ姫」は、あきたこまちの特別栽培米です。味わいの特徴を分かりやすく整理すると、次のようになります。
・食感:
ころんとした粒感と、ハリのある舌触りが特徴です。
・甘さ・香り:
口に含むと、お米の甘さと香りがしっかりと感じられます。
・料理との相性:
バランスの良い味わいで、白ごはんはもちろん、おにぎりや和食など毎日の食卓にも合わせやすいお米です。
粒感、甘さ、香りのバランスを楽しみながら、日々の食卓で味わっていただきたいお米です。
春のれんげ畑から始まる、一杯のごはん
私たちが普段食べているごはんは、田植えから始まるわけではありません。稲刈りを終えた秋から、すでに次のお米づくりは始まっています。
田んぼにれんげの種を播き、冬を越して育て、春に花を咲かせ、そのれんげを土へ戻す。そして、整えられた田んぼで次の稲を育てる。
浪江農園さんの「れんげ姫」には、昔ながらのれんげ農法と、その年の田んぼを細かく見つめながら米づくりを続ける生産者の技術が込められています。
埼玉県さいたま市で丁寧に育てられた、浪江農園さんの「れんげ姫」。一杯のごはんを味わいながら、その背景にある田んぼの一年や、つくり手の米づくりにも思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
今回ご紹介したお米
浪江農園さんのさいたま市産
コシヒカリ「男の浪漫」(特別栽培米)
荒川がもたらす粘土層の保水力で稲作に適した大地で、昔ながらのれんげ草を使った作り方で作られる良食味のコシヒカリ。炊き上がりのつや、やわらかな甘み、食卓に広がる新米の香りをお楽しみください。











